体に備わる力を引き出す「分子栄養学講座」/76

体に備わる力を引き出す「分子栄養学講座」/76

細胞膜の成分になるだけでなく、脳の神経伝達物質の材料となる栄養素

ケルセチンは、玉ねぎ(外側の緑色の部分)やりんご、ブロッコリー、モロヘイヤなどにも含まれるフラボノイドです。体の中でいくつも重要な働きがあり、ビタミンCの吸収をよくするだけでなく、毛細血管を強化し、毛細血管での透過性を調節する働きがあります。

人間の体には約60%の水分が含まれており、細胞の外側の膜である細胞膜によって水分とそれ以外の物質が区切られています。
細胞膜は、水分を区切るだけでなく、酸素などの物質の交換をスムーズに行ったり、細胞の情報を伝達する物質を作る材料になるなど、とても大切な働きを担っています。

細胞膜はタンパク質と脂質(リン脂質)からできており、リン脂質の中でもホスファチジルコリン(レシチン)は細胞膜の主役として働いている成分になります。特にエネルギーを産生するミトコンドリアの膜に多く含まれ、細胞内で酸素やグルコースを使ってエネルギーを産生する際に、ホスファチジルコリンにはとても大切な働きがあります。

ホスファチジルコリンは、細胞膜の成分になるだけでなく、脳細胞や神経細胞(ミエリン鞘)の材料となり、神経細胞が正常に働くためにも欠かすことができない成分です。特に脳内には多く存在しており(脳の乾燥重量として25%程度がリン脂質です)、脳内での情報を伝える神経伝達物質であるアセチルコリンの材料になります。

アセチルコリンは脳内の情報伝達物質で、その活性の低下によって、認知機能や精神機能に異常をきたすと考えられています。そのため、ホスファチジルコリンの摂取によって、脳内ではアセチルコリン濃度を増加させることができ、認知機能の低下やアルツハイマー病の予防につながると考えられています。

脂質は油にだけ溶けますが、リン脂質は水と油に溶け交わらせてなじませる性質(乳化作用)をもち、血液中のコレステロールや脂溶性物質を血液中に溶け込ませる働きがあります。そのため、血液中のホスファチジルコリンは、コレステロールを溶かして除去するのを助ける働きがあり、血管の壁に付着したコレステロールを溶かし、動脈硬化の予防にもつながります。また、胆汁中のコレステロールの濃度が高いと胆石ができやすくなりますが、ホスファチジルコリンのコレステロールを溶かす働きによって胆石ができにくくなると考えられています。

またホスファチジルコリンには、肝臓に溜まった中性脂肪を血液へ溶け出しやすくする働きがあります。肝臓の脂肪が増加していくと脂肪肝になりますが、ホスファチジルコリンの摂取によって、脂肪肝を予防していくことができるとも考えられています。

[su_note note_color=”#FEEEED”]

● 今週のまとめ ●

リン脂質は細胞膜の材料になったり、脳細胞や神経細胞の材料となるだけでなく、神経伝達物質を作るためにも必要になります。水と油を交わらせる働きがあるため、コレステロールを溶かし、脂肪肝や胆石を予防するためにも大切な栄養素です。

[/su_note]